吉田がキャラホビで企んでる

”今、自分がいちばん見たい番組みてキャラホビを目指す”というコンセプトのもとに吉田が話題のアニメに物申す!

放送まとめ

吉田がキャラホビで企んでる第15回「私以上に女に夢を抱いているヤツがいい」

投稿日:2016年7月23日 更新日:

「コミケの締め切りまであと16時間となりましたが、まだできてません」という、アナウンサーであるまでにアニオタである吉田さんのフリートークからスタート。今日のゲストは、『ファンタジスタドール』の谷口悟朗さんです。谷口さんといえば、『無限のリヴァイアス』(※1)、『プラネテス』(※2)など名だたる佳作を世に送り出し、さらにあの大ヒット作『コードギアス』(※3)シリーズを手がけた名“監督”。そんな谷口氏が今回の作品『ファンタジスタドール』では、クリエイティブプロデューサーという肩書で作品に参加しているワケが気になるところです。

ゲストProfile

 
谷口悟朗(たにぐちごろう)アニメ監督。予想外の展開と重厚な設定のSF作品を多く手がけている。代表作は「無限のリヴァイアス」「コードギアス反逆のルルーシュ」など。

本当のことを言うのが、常に正しいわけじゃない

「どうもお久しぶりでございます」と気さくに登場したゲスト・谷口氏。

――『コードギアス』シリーズで主人公の声を担当した福山潤さんが、「“監督は当日まで展開を何も教えてくれない”と語っていたのが印象的だった」と話を振った吉田さん。まずは演出論のところから。

谷口
役者さんて、先々のストーリーや設定を教えてしまうと、逆算するタイプの人がいるんですよ。無意識のうちに“あ、俺はこの女の子とはうまくいかないんだな”とか、“あ、俺途中で死んじゃうんだな”とかそういうのがわかっちゃうと、それに合わせた芝居で組んでいっちゃうことがあるんですよね。で、そうするとお客さんのほうが、無意識のうちに、予定調和を感じてしまうんですよ

吉田
少なくとも、キャラクターは自分が死ぬなんて思ってないわけですよね

谷口
映画とか、1本で終わるタイプのものだったらありだと思うんですよ。見ていてお客さんも、そうなるんじゃないかなというところで終わってしまいましたとなるから。でもやっぱりテレビとか、もしくは連続ドラマ的な構造にすると、じゃあ次どうなるんだろうって1回置いてあげないといけなくなるじゃないですか。すると、お客さんのためにも、役者さんには教えない方がいい時もあると思うんですよ

吉田
そこまで考えて演出されている?

谷口
一応、本職ですから(笑)基本的には、スタッフだとかキャストを、嘘ついてでもなんでもいいから、自分が思っている方向へ誘導すればいいわけですよ。そうすると、真実の言葉なんかいらないんですよね

吉田
結局、出来上がったものが自分の意図通りというか、誰かの心を動かすためには、言葉の真実さよりも、むしろあえて嘘をつくことはありえますよね

谷口
私、スタッフ間にまったく真逆のことを言うことってよくありますもん

吉田
お互いに、裏をとられたりすると、“なんだこれ?”ってことがあるわけですね

谷口
質問が来たりすることもあるけど、“それがなにか?”って返せばそれで終わるわけですよ

吉田
なるほど

谷口
要するに本当のことを言うっていうのが常に正しいわけではなくて、伝えたい情報はこっちが握ってればいいわけですよ。最終的に責任を取らなければならないのは、監督とかプロデューサー。いろんな人たちの思惑があって作品を作ろうとしたときに、大事なところは、どういう形でモチベーションを上げるかだったりとか、特別扱いしてもらうかとか、そういうことじゃないですか

吉田
もの作るときに大事なことって、たぶん懐なんですよ。今のお話って、まさに懐の深さのお話で、なおかつ、監督の柔和な表情と、目が明らかに怖い人の目をしているっていうところ。この感じが、すごくよくわかる…

谷口
いやー、私はこんなに優しいつもりでいるだけどなぁ

吉田
いや、優しさが、自分の狂気を押し通すための優しさに感じます。ええ

谷口
そのへんは自分ではわからないので

【編集注】
※1 1999年から放送されたサンライズ制作のテレビアニメシリーズ。『十五少年漂流記』『蠅の王』をモチーフに、宇宙を舞台に漂流した少年少女の人間関係・集団心理を描くSF作。

※2幸村誠原作のテレビアニメシリーズ。“宇宙ゴミ”の回収業に従事する主人公を中心にした人間模様の中に、愛や命の意味を問うていく。すぐれたSF作品に与えられる星雲賞を原作の2002年受賞に続き、アニメ版も2005年に受賞。

※3『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006)にはじまるSFアクション・アニメシリーズ。日本が“神聖ブリタニア帝国”に支配された近未来を舞台に、ブリタニアの王子ルルーシュが、謎の力“ギアス”を操り、復讐を遂げていく物語。絶大な人気を集め、続編、映画版と、現在もさまざまな展開を続けている。

アニメ雑誌見ると、もう腹立って腹立って

吉田
監督は一番初めのスタートは、アニメが作りたかったんですか? それとも、”何か”が作りたかったんですか?

谷口
私はもともと演劇部で、舞台に上がっていた方だったんですよ。で、高校のときにいわゆる映研、映画研究会に入っていたし、バイトでテレビのADもやりました。スポーツ中継、野球とか、鈴鹿サーキットに撮影にいきましたね。普通にテレビカメラのケーブル担いで走ってましたよ

吉田
それって、将来『コードギアス』作る人がやることとは全然思えない

谷口
いろいろあったところで、今村昌平監督が、日本映画学校を作るという話を知り合いから教えてもらって、おもしろそうだから、1回行ってみようかなと。1期生で入ったのが、私の映像人生の始まりなんですよ。だから、映画の助監やドキュメンタリー撮ったり…。でもドキュメンタリーではごはん食べられないんですよね。舞台もごはん食べられないんですよね。まずごはん食べないとどうしようもないじゃないですか

吉田
そうですね

谷口
それで、映像の世界でごはんを食べられて、なおかつまだやってないエンタメ、映像的な楽しみというのは何だろうと考えたんです。で、アニメーション。もともと好きだったし、よく見ていたけれど、絵を描けないから諦めていたんですね。でも折角だからアニメもちょっとやってみたいなというのがあって。OBの編集の方に相談したら、“じゃぁお前J.C. STAFF(※4)ね”と言われて。J.C. STAFFという会社は当時知らなくて。知らないけど、もう先輩にそう言われたら面接に行くしかないじゃないですか。で、面接にいって、専務さんだったかな? 話をしていたら、面接に来ているつもりだったのが、10分くらいしたら「じゃ、不動産屋行こうか」と、アパート探しが始まっちゃって。気がついたら、スタッフとしてアニメ業界にいたという。そんな感じですよ

吉田
もう面接っていうより、斡旋ですね

――J.C. STAFFの制作進行としてアニメ業界に飛び込んだ谷口氏は、その後サンライズに移り、そこで演出家を本格的に目指していくことに。当時は「早く監督にならねばならないという焦りがあった」と明かす。

谷口
ものすごく焦っていたんですよ。同学年の人で、先にやっぱり名前を売ったりする人だったり、こっちが制作進行の立場で、コンテ見たりすると「あ。うまいなこの人」とかっていうのがいっぱいいるわけですよ。で、アニメ雑誌見ると、もう腹が立って腹が立って

吉田
腹立つんですか?

谷口
いや、腹立ちますよ。こっちはもうペーペーの、制作進行で演出になれるかどうかもよくわからない状態で、同い年や年下の人が、もう普通に作監やっていたりだとか、コンテ切ったりだとか演出だったりとか。人によっては監督で、出たりしているわけじゃないですか。もうね、アニメ雑誌とか、仕事だからしょうがないから見てはいるけれど、ビリッと破きたくなるみたいな

吉田
そうなんですか?

谷口
いろいろとアプローチをしていたところで、どこかで気に入っていただけたのか、当時サンライズの事業部長で、今マングローブ(※5)を興された、小林(真一郎)さんと河内山(隆)さんが、「こいつ監督にしてもいいんじゃない」みたいな。当時、サンライズの制作会社というところは、若手を監督として抜擢していくという流れがあったんですよね

吉田
うーん

谷口
赤根和樹監督や『ビバップ』のほうのナベシンさん(※6)とかがデビューされるという流れの端っこに、私がたまたま乗っかれたと思うんですよ。で、そういうのがなかったら、私はサンライズ生え抜きじゃないから、よその会社に行って仕事するしかないだろうなーと考えてましたし

吉田
だけどまさにサンライズとはばりばりお仕事をされているわけで

谷口
まぁそうですね。でも、それはもう結果論ですから

【編集注】
※4(株)ジェー・シー・スタッフ。アニメーション企画・制作、およびデジタルコンテンツ制作会社。J.C.は、“JAPAN CREATIVE”の略。『少女革命ウテナ』(1997年)『灼眼のシャナ』(2005年)『バクマン。』(2010年)など話題作、注目作、人気作を生み出し続けるアニメ業界の老舗。

※5株式会社マングローブ。アニメーションなどを中心とした映像制作会社。『サムライチャンプルー』(2004年)『ミチコとハッチン』(2008年)『神のみぞ知るセカイ』シリーズ(2010年)などを制作。

※6『カウボーイビバップ』の渡辺信一郎監督。同じく“ナベシン”と呼ばれるアニメーション監督にワタナベシンイチ監督(『はれときどきぶた』など)がいるため、よく間違えられる。

自分以上に女に夢を抱いているやつがいいだろう

『ファンタジスタドール』では、クリエイティブプロデューサーとして監督とは異なる関わり方に。
――クリエイティブプロデューサーの肩書で参加している『ファンタジードール』へ、話題が移り、谷口さんがいきなり美少女ものを作りだしたことにびっくりしたという吉田さん。

吉田
深作欣二がいきなり女子高生のラブもの撮り始めたらびっくりするでしょう。そのぐらい同じぐらいのびっくりが、僕の中にはあったわけです。

谷口
そんなにそこにズレはなかったんですよね。私の方はもともと、ある種フォーマットが成り立っている子供向け番組とか、いわゆる玩具タイプの作品とかいくつかやってはきましたしね。それに、何か違うジャンルや切り口を探しているところもあるので。で、その中に “女の子を中心としたものはないよね”と。ただ、今回監督をやっているわけではないというのが大きなポイントになってくるわけですけれど

吉田
もう少し説明していただくと?

谷口
私が監督をやると、シリーズというか、お話を完結させて終わらせちゃうところがあって。私、どうしてもお話の構成とか構造のところで、かちっと作っちゃうんですよね。あともう一つは、まさに今、吉田さんが言われたことに繋がるんですけれど、私が監督としてやるとなると、スタッフが最初っから、各々のイメージとしてある「谷口作品」を期待していたりとか、そういうスタッフが集まってきちゃうんですよ

吉田
あーーーー

谷口
過剰に力入れ過ぎちゃうんだ、違うところに。それは作品にとってよくない。じゃあ、斎藤(久)監督(※7)に、こういう舞台で、こういうキャラクターがあって、こういう設定のところで、なんとなくこんな感じのお話のやつを想定しているんだけど、監督としてやってくれないかなぁと誘ってみたんですよ。当然、ディレクターは斎藤さんだから、あなたの好きなふうにやっていいよって

吉田
斎藤監督っていう人を選ばれた理由っていうのをそれぞれ知りたいんですけど

谷口
中学生ぐらいの女の子を、うまく演出して、お客さんが楽しんでもらえるようにできるかどうかというところで…、私はちょっとわかんなかったんですよね。楽しさとか明るさとかそういったものが出せて、私以上に、女に夢を抱いているやつがいいだろうと考えたんですよ。それが最も素直な感情だろうと

吉田
(笑)ほぉほぉほぉほぉ

谷口
最も夢を抱いているやつは誰かなと。私のやり方だとかそういうものを知っていて、なおかつ、いい意味で私の言うことを否定することもできて、心のどこかで女をリスペクトできる人

吉田
おぉおぉ…、だいぶわかってきました

谷口
それで斎藤監督だろう、と

吉田
斎藤監督の『そらのおとしもの』に関して言うと、あんなにパンツをドラスティックに展開した作品は見たことがなかったですもん

谷口
でも、そのままやるというのはただのエロの垂れ流しになるんですよね。そこにやっぱりなんらかのフォーマットというか、枠をはめてあげたほうがいいわけですよ

吉田
パンツが好きな人が、パンツを空から降らしてしまったわけですもんね

谷口
えぇ。一歩間違うと、斎藤監督は常にパンツにしかこだわることができなくなってしまうということに

吉田
(笑)なるほど

谷口
つまり、困ったらパンツに頼るというふうになる可能性があると思うんです

吉田
困ったらパンツに頼る!?

谷口
演出家だとかアニメーターだとか、もしくは脚本家さんって、困ったら自分がかつてうまくいったパターンに頼ろうとするんですよね。斎藤監督のキャリアで、“困ったらパンツ”ということはやらせてはいかんわけですよ、まだ。斎藤監督があと5年、10年経って、パンツを撮り始めたら、それは立派なパンツですよ

吉田
なるほど。今のところだと、そんなに技のない中でのパンツになっちゃうから、ただのパンツになるわけですね

谷口
そうです

吉田
もっと技を身につけてほしい、と

谷口
そうです。その果てにもうパンツに戻ってくるんだったら、それはいいんじゃないのっていう

吉田
一級のパンツだと

谷口
そういうことです。今回、自分が監督だったら、こんなカット作らないなってのがありましたね。1話のところで。初めてうずめがカードを出すところで、脇とか胸ぐらいのところで、浅くパン・アップするカットがある。あれは私の文脈にはないんですよ。他の方を監督としてお呼びする以上は、そういったところは大事にしなければだめですしね。そこが楽しみにしている部分でもあります

吉田
じゃ正直、今、ユーザーというか、観る人としても今かなり谷口さん楽しんでいますよね

谷口
そうですね

――今週はここまで! 谷口さんが初期設定を作っているのに、谷口作品ではない味が出ているという「ファンタジスタドール」。「どうなるかは博打なんですよ」と谷口さん。まさに博打の真っ最中に来てくださっってありがとうございました。今後の展開が楽しみです!

【編集注】
※7 『バンブーブレード』(2007年)で監督デビュー。『そらのおとしもの』(2009年)『僕は友達が少ない』(2011年)など、主に美少女作品でその本領を発揮。

今日の一筆

m15_05

吉田
なんで揚げ物になったんですか、最後これ!

谷口
いい言葉だと思うんですよね。人間って突き詰めちゃうと、アジフライ食べられたらそれでいいじゃんないかな。それ以上の金は人生のおまけみたいなもんだと思うんです。だから、これだけ目標にしておけばいいよ

吉田
最低限アジフライが食べれたらいいからこそ、延々博打打ってられるわけですね

-放送まとめ

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