吉田がキャラホビで企んでる

”今、自分がいちばん見たい番組みてキャラホビを目指す”というコンセプトのもとに吉田が話題のアニメに物申す!

放送まとめ

吉田がキャラホビで企んでる第11回「素子はかわいい、バトーはかわいそう」

投稿日:2016年6月25日 更新日:

公開中のアニメについてどんどん語っていこうという主旨の当番組。「アナウンサーだけどアニオタです」と自己紹介する吉田さん。今日のゲストは、「攻殻機動隊ARISE」(※1)の総監督・キャラクターデザインを務める黄瀬和哉さんと、脚本を務める冲方丁さん。かつて黄瀬さんが作画を務めた「機動警察パトレイバー」で「アニオタに目覚めました!」と語る吉田さんが、“第4の攻殻”についてメスを入れます。

ゲストProfile

 
黄瀬和哉(きせかずちか)。Production I.G取締役。作画監督として「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(95年)の制作に参加。「攻殻機動隊ARISE」で総監督・キャラクターデザインを務める。

 
冲方丁(うぶかたとう)。小説家、脚本家。第24回日本SF大賞を受賞した「マルドゥック・スクランブル」シリーズで、濃密なサイバーパンク世界を描く。

『攻殻』は“真顔”の作品です

「収録しながら飲める番組なんて初めて」(黄瀬さん)と、終始飲み会ムードで話を進める一同。

吉田
『攻殻機動隊』ほどのビッグタイトルですから、手がけるにあたって緊張もあったと思うんですが、舞台挨拶も終えられて、少しは落ち着きましたか?

黄瀬
そうですね。舞台挨拶で、劇場に結構人が来てくれていたのを見て、ほっとしましたね

冲方
僕もほっとしました。と同時に、僕の作業は残っているので(笑)、『まだ終わってねーのか!』という危機感もあります

——「冲方さんの作業ってまだまだ残っているんですね」と驚く吉田さん。続いて、「『攻殻』とは何か」について二人に訊ねる。
吉田
『攻殻』って、真顔の作品か、笑い顔の作品かでいったら、まあ真顔の……

黄瀬
『笑い』がほとんどないですよね。設定資料画にも笑顔を描いてないですもん。ほとんど使えないので

——吉田さんが「〜ARISE」の設定資料画を取り出す。それをパラパラめくりながら……。
吉田
確かに

黄瀬
素子(※2)は特にそうですね。トグサ(※3)とかは、少しはありますけど

吉田
冲方さんもこの黄瀬さんの画を、どれだけ見たか分からないですよね?

冲方
ほんとですよ。ラフが送られてきても、いうことないんですよね。うますぎて(笑)

吉田
確か冲方さんも、ご自身で画を描かれたりするんですよね? 冲方さんから見て、黄瀬さんの画の凄さって何なんでしょう?

冲方
理屈がきちんと画にともなっているというか。『こうだから、こういう画になる』っていうディテールが徹底されているんですよね

——何かを思い出したように、設定画からイバチというキャラクターを探し出す吉田さん。
吉田
僕もびっくりしたんですけど、そんなにメインどころでもない、このイバチというキャラの設定画に、わざわざ靴の裏まで描かれているという

——一堂大爆笑。
黄瀬
アクションが起こると、当然靴の裏も出てくるじゃないですか? 一応ないと、『靴の裏はどうなってるんですか?』ってスタッフに聞かれるんですよ。実際、僕も昔、困ったことがあったし。だから、『キャラがこう向くと、服のココが見える』といったことまで、ある程度考えています。ほら、これとか

——イバチの背中の服の結び目を指さす。「え、これ?」と驚く吉田さん。
黄瀬
正面と後ろの画だけじゃ、わからないことが多いですからね。僕は言葉で伝えるのが苦手だから、なんとか画で伝わるようにっていつも思っています

吉田
その一方で、冲方さんは普段のフィールドが、小説なわけじゃないですか? だから二人がチームを組むと、すごくバランスがいいのがわかる。そこで聞きたいのが、『二人がどういうコミュニケーションをしながら映像を作っていくのか』というところなんですけど

黄瀬
主に喫煙所での会話(笑)。本読みのタイミングなんかでは、製作委員会の人とかが大勢いて、いろんな意見が飛び交うから、僕は割と黙っていることが多いんです。で、休憩中に喫煙所に行って、二人で煙草を吸いながら『ここ、こうした方がいいよね』(笑)とか話しているっていう

冲方
会議だと誰が何を言い出すかわからないですからね。出尽くしたところで、喫煙所で二人でブレストをする。『ここは絶対押し通しましょう』とかね

——頷きながら、吉田さんが自らの“攻殻観”を語り出す。
吉田
さっきも話題に上がりましたけど、『攻殻』みたいな真顔の物語は、理詰めで納得がいかないと、僕なんかは物語に乗った気になれないんですよね。そうした意味で、『〜ARISE』は物語のスタートからゴールまで、1本筋が通っていると思います

冲方
今回大変だったのが、作る人それぞれの中に“攻殻観”があることだったんです。とにかくまとまらない。僕もそうなることをある程度想定してプロットを数種類出したんですけど、最初の会議はカオス状態でしたね

黄瀬
大変だったね。みんなそれぞれの素子像なりバトー像(※4)があるから。『素子はこんなことしないよね』っていう意見が、あちこちから噴出するんですよ(笑)。新しいことを考えるたびに『いや、そういうことしないでしょ』っていう敵対意見が生まれる。でも、そもそも新しいことをしようとしているんだから、『しないでしょ』はないでしょって思っていました

冲方
“攻殻観”はキャラクターに尽きますね。『素子はかわいい、荒巻(※4)はかっこいい、バトーはかわいそう』っていう三本柱でいこうっていうことに決まりました(笑)

【編集注】
※ 1 原作・士郎正宗によるコミック(=“第1の攻殻”)、押井守氏が監督した劇場版(=“第2の攻殻”)、神山健治氏が監督したTVシリーズ(=“第3の攻殻”)に次ぐ、新たな「攻殻機動隊」。「犯罪に対し常に攻性である」という理念のもと独自の捜査を行う警察機関「公安9課」結成前のストーリー。陸軍「501機関」に所属する軍人・草薙素子は、慕っていた上官の死を知り、真相を探るべく行動を開始する。だが、この事件を追いかけているのは、素子だけではなかった。高度に発達したネット社会の中で、素子は“真実”を見つけることができるのか……。後に公安9課のメンバーとなるキャラクターたちも事件を機に交錯していく、従来の「攻殻」ファンなら思わずニヤリとしてしまう演出も◎。

※ 2 「攻殻」シリーズの主人公。ずば抜けた戦闘能力とともに、のちに「エスパーより貴重な才能」と評されるほどの高度なハッキング能力を持つ。

※ 3 後に公安9課のメンバーとなる刑事。推理考察に優れる。

※ 4 陸軍空挺特化第一出身の元特殊部隊員。「眠らない眼」と呼ばれる義眼を持つ。後に公安9課のメンバーとなる。

素子は前髪パッツンで決まり!

「〜ARISE」の設定画が初出となった雑誌を手に、素子像を熱く深掘りしていく吉田さん。

——一堂、攻殻ファンに「〜ARISE」の感想を聞いた舞台挨拶のVTRを視聴。一新されたキャラクターのデザインに、賛否両論があったことを語り出す。

吉田
僕も、雑誌で初めて『〜ARISE』のデザインを見たとき、素直に『これどうなるんだろう?』と思ったんです。一見、線が少ないから、『素人でも描けちゃうんじゃ……』なんて考えてしまったんですけど。ただ、黄瀬さんの作品はずっと見てきていたから、きっと“動くこと”を考えたキャラデザなんだろうな、と

冲方
見る人がCGとか特殊効果とかに慣れすぎて、“いい画”の価値観が変わってきているんじゃないですかね。僕は、効果に頼りすぎた画ってどんどん高いレベルのものを求められるから、だんだんもたなくなるんじゃないかなと思うんですが

吉田
今回、ファン20人に話を聞いてみて、『動いたらやっぱり素子だった!』って答えた人が19人いたんですよ。僕自身そう思いましたし。アニメのキャラクターがこんなにキレイに旋風脚みたいなキックを繰り出せるんだと。黄瀬さんはキャラクターをデザインするとき、どこから考えるんですか?

黄瀬
そうですね。例えば、今回、公安9課結成前のストーリーということで、素子を若く見せる必要があった。そこで、若い素子を見せるにはどうすればいいのかって考えて、前髪パッツンに至ったんです。『どこから考える』というよりは、『この作品にはどういう背景があって、それを効果的に見せるにはどうしたらいいか』というのをまず考える、といったところでしょうか

冲方
黄瀬さんの場合、いろいろな要素をフラットに整理したうえで、スッと結論を出していくっていう感じなんですよ。気づいたらペンが走っているんです。僕みたいにごちゃごちゃごちゃごちゃ考えて答えを導き出すっていうタイプとは、方向性が全く違う。だからこそいい化学反応が起こったのか、黄瀬さんのキャラデザを見た瞬間、『これでスタートラインに立てる』と思ったんです

黄瀬
まあ、僕も冲方さんのプロットにデザインが追いついていなかったので、勢いでまとめたところもあります。周りには目が点な人も多かったんですよ

冲方
眉の動きのバリエーションがよかったですね。素子って一見固い表情だけど、しっかりと心情線がある。脚本ではなかなかそれを表現できないんですけど、黄瀬さんは眉で表現していて

吉田
“第3の攻殻”である『SAC』(※5)を監督した神山健治(※6)さんも、『これは攻殻らしい攻殻だ』と仰っていました。僕も実際に作品を見て、その意味がわかりましたね

黄瀬
『お前の画はとりあえず動かせ』って昔からよくいわれるんですよ。『画に魅力はないけど、動いたら面白い』って(笑)。

吉田
なるほど、動かない画と動く画は違うと。僕も「攻殻」ファンとして、画の素晴らしさについてこの場でひとこと言いたかったんです

——画の素晴らしさがわかるシーンとして、物語冒頭の一場面がVTRで流れる。
VTR終了後。

吉田
ここで登場した工作機械にも、ものすごい細かい設定があるんですよね。ディテールが細かくて、そのままフィギュアにできるんじゃと思うくらい

黄瀬
作画は3Dで行いますからね。その方が細かい芝居が作りやすいので

——話は「〜ARISE」の“見せ場”の作り方についてへ。

冲方
脚本を書く立場からすると、とにかく、放っておくと1シーンの情報量が多くなってしまう作品なんです。電子戦電脳戦(※7)一つとってみても。ただ、監督的には画で端的に伝えたいという思いがあるから、いらない情報を、どんどん削ぎ落としていかなければいけないんです

黄瀬
セリフに頼ってしまうと全部説明になってしまいますからね。『その場ではわからなくても、見ていたらなんとなく気づく』くらいの表現にポイントを合わせています

吉田
でも、観客を信頼していないと、そんなにハイブローなものを出せないのでは?

冲方
そういう意味では、相当信頼しています。例えば、『ネットって何?』って説明を全くしていないんですよ。『GHOST IN THE SHELL』の場合は、時代が時代だからしっかり描いていましたよね。オープニングでサイボーグが組み立てられるところを描写して、『全身義体(※8)とは何なのか』を見せたり

黄瀬
『ネット』に関しては、もう説明する必要がない時代になった。ただそのぶん、『攻殻』が持つSF感を描くのが難しくなってきたな、と感じます

冲方
『画面をなぞって操作する』っていうのが以前はSFの代名詞的なガジェットだったけど、もう現実になってしまいましたからね。スマホとか

吉田
じゃあ『攻殻』の魅力って何なのかって考えると、僕は『大人がマジメに未来のことを考えている』ところにあると思うんです。架空の話じゃなくて、『今のこういうテクノロジーが将来こうなったら、世界はこう変わる』っていうシミュレーションがすごくされている

冲方
正直めんどくせー作品ですよ(笑)。緻密に話を組み立てていくというのは、難しいし楽しいものでもある

吉田
オープニングのナレーションで、電脳化が浸透した未来について語られますけど、それによって人間の個性がなくなるほどの未来でもないというのが示唆されていますよね。『攻殻』の世界観は、この現実世界の延長線上にある一つの仮定だと思うんですけど、これが行くところまで行ったら、人間ていうのは一つの存在に統合されてしまうんじゃないかと感じるんです。『だけどそうはならないんじゃないの』って、未来の無限の可能性を見せてくれるのが、素子たちの理念なり行動なんじゃないのかなって

冲方
電脳ネットワークがどれほど発達しても、民族も国家も人間も、規格統一化はされないっていうのが、原作から通じるテーマですからね

吉田
と同時に、そうしたマジメなことをマジメに語るんじゃなくて、物語に語らせているところがいい

冲方
こうした物語の仮想敵って、ノンフィクションなんです。事実だけを知りたければノンフィクションの本を読めばいい。だから僕は、フィクションで、ノンフィクションの先を行きたいと考えているんです

——最後に、「これから『〜ARISE』でやりたいこと」について、まとめに入る吉田さん。

黄瀬
自分の中に確固とした答えがないんですよね。見てくれる人が楽しんでくれたらいいというくらいかな。物語としては、冲方さんにほとんど任せているので

冲方
かつての『攻殻』が描いた未来に現実が追いついても、『攻殻』という素晴らしいコンテンツが死ぬわけではない。だから、まだ『攻殻』は終わらないんだぞ、っていうことを主張していくのが僕の使命だと思います

【編集注】
※ 5「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」のこと。通称“第3の攻殻”。

※ 6 アニメーション監督。「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズのほか、TVアニメ「東のエデン」、劇場版アニメ「009 RE:CYBORG」などで知られる。

※ 7 『攻殻』の舞台は、脳にセットしたマイクロマシンによって、意識をダイレクトにネットへ接続できる「電脳化」という技術が浸透した未来。この世界では、外部から電脳に進入して対象のコントロールを掌握、情報を奪う「電子戦」が戦闘の大きな要となっている。

※ 8 脳や中枢神経以外の器官を機械で代替した肉体。「義体化」と呼ばれる技術によって行われる。義体化の度合いはキャラクターによってさまざまで、トグサのように電脳化だけを施されたものもいれば、素子やバトーのようにほぼ全身を義体化したものもいる。

今日の一筆

m11_04

スラスラとペンを滑らせ、あっという間に黄瀬素子が完成。

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