吉田がキャラホビで企んでる

”今、自分がいちばん見たい番組みてキャラホビを目指す”というコンセプトのもとに吉田が話題のアニメに物申す!

放送まとめ

吉田がキャラホビで企んでる第10回「閉鎖空間が好きなんです」

投稿日:2016年6月18日 更新日:

「仕事して、あー疲れたー、次の時間まで何をしよう…と思って、無意識にアニメのDVDを再生機に入れていた、アナウンサーの前に1人のアニオタである吉田です」。そんなアニオタあるあるからスタートした第10回。今回は、吉田が気になっているアニメ「サカサマのパテマ」の監督、吉浦康裕さん。「はっきり言います。10年後には、今日、この番組を見ていたことが自慢になるかもしれません!」

ゲストProfile

 
吉浦康裕(よしうらやすひろ)。アニメ監督。学生のころより自主制作でアニメを作りをはじめ、『イヴの時間』でメジャーデビュー。いきなり劇場版の監督となる。東京国際アニメフェアOVA部門優秀作品賞など、数々のアニメ賞を受賞している。最新作、「サカサマのパテマ」が2013年11月9日(土)全国劇場公開。

古典的SFがつまった「イヴの時間」。海外で大人気

出てきた瞬間、カメラに笑顔を向けてくれた監督は吉浦さんが初めてです

吉田
僕のwikiに、吉浦さんと呑み友達って書いてあるんですけど、間違ってはないけどそんなに毎日は飲んでないですよ

吉浦
あれ、吉田さんが自分で書いたんだって思っていたんだけど

吉田
違いますよ! 吉浦さんなら夜中に呼び出しても一緒に飲んでくれると思ってますけども

――今回よりお品書きが登場。今までお茶しかなかったのにビールと焼酎がラインナップ。「どうしたんだ、番組」と衝撃を受ける吉田さん。対して吉浦さんは「イモ(焼酎)」を注文。生放送中のことを忘れたようなリラックスぶりです。

吉田
最近会えてなかったんですよね。吉浦さんがパテマを一生懸命作っていたから。今日は、とりあえず吉浦さんがどんな人なのかを紹介するべく「イヴの時間(※1)」から話してもらおうと思います。ネットに公開されたのって5年前なんですね

吉浦
そうですね。公開してから劇場版になるまで時間があったんで

吉田
これを見たときの衝撃は忘れられない。半ば強制的にパンフレットにコメント書いちゃったし。僕、年間数百本近くアニメ見ていますけど、ここ数年でトップレベルの衝撃ですよ

吉浦
おかげさまで。去年、iTunesでの邦画DL数が1位になりました。ちなみに全体だと3位で、1位と2位は「インセプションと「トイ・ストーリー3でした

吉田
えええ、スゴすぎるでしょ! 最近の動きとしては募金を集めるサイトで、イヴの海外版の制作資金を集めようとしたら、目標が1万8千ドルだったところ、一日で13万ドル突破

吉浦
予定より集まっちゃって、字幕版だけじゃなくて吹き替え版も作れそうなんですよ

吉田
イヴの時間は古典的なSFですよね。古典的なSFというのは、こういう空想科学技術を僕らの世界に導入したらどうなるかというのを真剣に考えることですよね

吉浦
SFなんですけど、もっと広い間口で考えていて、ロボットの社会的立場というものを考えるよりも、思春期の男の子の家に女性アンドロイドがやってきたらどうなるのかというところに注目してみました

吉田
その結果が、僕らが機械に対してどう思っているのかを描き出すような作品になったわけですね

吉浦
社会批判の作品って言われるんですけどそれは後付けで、まじめに作っていたらそういうメッセージ性がついてきたんじゃないのかなと思います

吉田
日本人ってロボットに対してわりとプラスのイメージを持っていると思うんですよね。きっとアンドロイドが家にいたら家族のように可愛がるんじゃないかな

吉浦
海外のロボットが出てくる物語って、最初からロボットが反乱するというところが原点なんです。フランケンシュタインもそうですけど、異質なものが人間に反抗するというのが刷り込みであるんですね。日本人はロボットの原点が鉄腕アトムですから、根底にあるものが違うんじゃないかと

吉田
僕、イヴの世界を初めて見て、まず驚いたのが、アニメじゃないとできないカット割り。当たり前だけど、アニメだからカメラがない。だからスゴイ狭い空間をカメラがすり抜けていく。しかもそれに嫌味がなくて、一つ一つに意味があって驚きがある。これはスゴイ。それで、公開したら大ヒット。他のエピソードを見て驚いたんですよ。吉浦さんの中に古典SFの根幹みたいなのがあって、それぞれのエピソードがしっかり成り立っている。すごくきれいなシナリオだなと思った

吉浦
わー、ありがとうございます。僕、物語を書きたいがために映像やっているんで

吉田
え、映像が作りたくてじゃないんですか? あんなに映像のセンスがあるのに

吉浦
もちろん映像も好きなんですけど、どっちかというと企画の人間なんですよ。イヴの時間は全6話で、全部が喫茶店の中の話だから、なるべくバラエティに富んだ話にしようと思って、ヒューマンドラマとか、コメディとか。僕、三谷さん(※2)が好きで、いつか王様のレストランのようなアニメが作りたいと思っていたんですね。それがイヴの時間を作るきっかけの一つではあります

吉田
はじめから海外に出ていこうと思っていました?

吉浦
いやぁ、考えてなかったです

吉田
でも海外の人にめちゃめちゃウケてますよね。募金もスゴイですし

吉浦
そうですね、なんか現物が欲しいらしいですよ

吉田
違う違う、海外でウケている理由を…

吉浦
あ、そうですね…。僕は、あの作品では日本人のロボットの価値観と、海外のロボットの価値観の真ん中あたりを狙っていて、ロボットをかわいがる一方で、非常にドライな部分もある。ロボットは人間になりたいわけじゃない、ロボットはロボットで完結しているというところにしたので、海外の人も入りやすかったのかもしれません

吉田
この募金でたくさんお金が集まったので、すごくリッチなBlu-rayになるらしく、僕が本当にアニメが好きな人たちとやった濃いイベントの内容も収録されるらしいです。人目に触れるとは思っていなかったイベントが、まさかの字幕付きで

吉浦
うれしいですねー

吉田
そういうことで、海外にファンが多い吉浦さん。先週、アヌシー国際アニメーション映画祭(※4)のアウトオブコンペ作品に呼ばれたそうで、そのときの写真を用意してもらいました

吉浦
アヌシーって街に水路があってすごく水の綺麗なところで、「ARIA」(※4)みたいな雰囲気なんですよ。ここに世界のアニメファンとかバイヤーが集まっていて、客席が満員で、お客さんがすごく熱い。みんなが「イヴの時間」を見て来てくれたわけじゃなくて、僕の作品は初見という人がほとんどだったんですが、反応がよかったです。声に出して笑ってくれたりして。余談ですけど、スーツを着ている監督は僕しかいませんでした

【編集注】
※1 吉浦さんのメジャーデビュー作。「イヴの時間」という喫茶店を舞台に、そこへやってくる人やロボットたちの交流を描いた群像劇。当初は約15分の6話構成でネット公開されていたが、2010年に劇場版として再構成されて上映された。

※2 劇作家・脚本家三谷幸喜のこと。ちなみに、「イヴの時間」のタイトルを「ラジオの時間」から取ったらしい。

※3 フランスのアヌシーで行われる国際映画祭。世界最大規模のアニメーション見本市も併設されており、世界トップクラスのアニメーションが集まる。受賞作品に宮崎駿監督作品「紅の豚」(長編部門グランプリ)のほか、細田守監督作品「時をかける少女」(長編部門特別賞)など。

※4 天野こずえのマンガのアニメ化。テラフォーミングされて水の惑星となった火星を舞台に、ウンディーネと呼ばれる観光の水先案内人を目指す少女たちの日常を描いた作品。

面白い企画を作って、面白い映像を作る

――世界中の人が気になっている「サカサマのパテマ」(※5)。「一見、ジブリっぽい作品なんですよ」と吉田さん。それを聞いて吉浦さんはにやりと「実は冒頭のところはそれを狙っていました」。

吉田
普通の思春期の男の子と女の子のストーリーなんですよ。ストーリーは。だがしかし!

吉浦
重力が反対向きにの男女が出会ったらどうなるんだろうと思ったんですね。キャラクターデザインの方からは、ヒロインの顔、逆さまで画面に写っても大丈夫? って言われたんですけど、意外とスンナリ認識できたみたいで良かったです

吉田
イヴの時間をこれはアニメじゃないとムリだっていったじゃないですか。実写だとロボットに演技させると「ロボットに演技させるなんてスゴイな」って思う。役者さんがやると「この人、ロボットの演技がうまいな」って思う

吉浦
アニメにすると、人間もロボットも等価で描けるんですよ

吉田
吉浦さんはアニメがどんなものなのかってのを考えている人なんだなって思ったんですね。で、パテマを見て、やっぱり「アニメじゃないとムリだ」っていう感想を持ったんですね。実写で撮っちゃうと、カメラをひっくり返して撮っているんだなって思ってしまう。それに最初に見た重力側が正しい重力、次に見た側が嘘の重力というように見えてしまう。アニメの場合はどっちも等価に見える

吉浦
あ…そう言われると納得できるかも…。そこらへんは無意識に作っていますから…

吉田
えー! 吉浦さんはそういうこと考えている監督でしょ!?――と、ここで吉浦さんがパテマの絵コンテを持ってきてくださっているということで、絵コンテが登場。意外としっかり描かれているコンテに感動する吉田さん。「ここはAパート(※6)んで、ちゃんと描きました」とのこと。だんだん後ろに行くほど簡素になったそうです。

吉浦
キャラクターはシンプルに描くほうなんですけど、舞台装置とかカメラワークはしっかり描こうと思っています。分担でいうと僕は演出も兼ねてるんですけど、カメラの構図はしっかり決めようと毎回思っています

吉田
おおっと、これは先に吉浦さんのこれまでの作品を話したほうががいいかもしれませんね。吉浦さんが世間に認知された作品で「ペイル・コクーン」というのがあります。制作から監督、作画まで吉浦さん1人で作った作品なんですよね

吉浦
個人制作をしていましたからね。管理社会と閉鎖空間が好きなので、ちょっとパテマに通じるところがあります

吉田
視聴者の方から質問がありまして「吉浦さんはキャラクターとストーリーはどちらから作りますか?

吉浦
キャラクターとストーリーの前に企画があると思うんですよ。それを主軸に作っていきます。パテマの場合は逆さまになったヒロインが出てくるという企画を作って、その段階ではキャラクターも世界観もなくて、逆さまのヒロインをどう効果的に使うかという観点からキャラクターと世界観を作りました。パテマの地上の世界観は、当初は全然違っていたりもします。また、地上と地下を逆に対比させたいという意図があって、地下は空がないけど暖かくて魅力的で、地上は本来なら開放的なはずなのに抑圧されている世界にしようとなりました

吉田
作ることっていろんなやり方があると思うんですけど、吉浦さんの作り方は楽しそう!

――自主制作から劇場版アニメの監督、そして世界で活躍する吉浦さんの経歴に嫉妬したスタッフが、何か恥ずかしい写真を持ってきて欲しいと頼んだところ、高校の演劇部だったころの写真を持ってきてくださいました。
吉浦
このころは演じるばっかりで、演出には興味なかったですね

吉田
どっから演出に目覚めたんですか?

吉浦
高校卒業するころに役者を諦めて、PCゲームの「MIST」(※7)にハマって、こんなCGの映像が作りたいと思っちゃったんですよ

吉田
MIST! 閉鎖空間だ…(笑)。吉浦さんって、すごく理屈っぽく物事を考える人だと思うんですけど、理屈じゃないところがありますよね。閉鎖空間が好き、ロボットは良いヤツだとか

吉浦
ロボットは悪いやつにはしたくなかったんですよね。結局、作るなら面白いものを作りたいっていうエンタメ根性なんですよ

吉田
エンタメとは楽しんでもらうものっていう思想ですね

――それを聞いて、首をかしげる吉田さん。「吉浦さんの処女作品を見たことあるんですけどなんか違いますよね?」。処女作品が画面に映し出され「うわー、ホームページからも削除したのに」と吉浦さんが動揺。「生放送で見ちゃいましょう!」と鬼畜にも映像を流します。

吉浦
うわぁ…。ほら、学生のときのモラトリアムな…。そういう勢いで作ったので、今はすごく恥ずかしいです。まさかフルで流すんじゃないですよね?

吉田
フルですね。これが大学2年生のときの作品

吉浦
恥ずかしすぎて画面を見られないですね…。別に訴えたいことはこういうことではないんですけど、若さ故の上っ面の衝動です

吉田
そうは言っていますけど、ちゃんと吉浦さんらしい映像センスを感じるんですよね。これも1人で作っていたんですよね?

吉浦
1人で作りました。これを発表して先輩たちに褒められたんで天職かなと思って、ここまで来ちゃいました

吉田
吉浦さんの世界は、吉浦さんの意識的な理屈の部分と、無意識の感覚の部分がよく合わさっていると思う

吉浦
うーん…。企画を作ったり、物語を書いたりするときは意識して理屈っぽく書くようにしているんですけど、好きなモチーフってずっと無意識に使い続けちゃっているので、そういうものが画面に出てしまうんじゃないかなぁ

――処女作品が放送されてしまって心臓がバクバク言っているだろう吉浦さんに、追い打ちをかけるかのごとく、吉田さん、さらなる刺客を放つ。

吉田
実はまだありまして。吉浦さんが小学5年生のときに書いた小説を持ってきてもらいました!

吉浦
これはかなり恥ずかしいんですが、夏休みの自由課題で書きました

コミケの本より丁寧に作られている装丁は、「うちははっきり言って親ばかなので、親が製本してくれました」とのこと。

吉浦
学校に提出したのは原稿用紙だったんですけど、父がワープロで打ってくれました。今読むと好きな小説の寄せ集めではあるんですけどね

吉田
でも、小学5年生でファンタジー小説を書いたってところがすごい

吉浦
ちょっと読み返してみたんですけど、1ページ目で身悶えしました。これを書いたときは、自分でスケジュールをきって淡々と書いていったんですよね。今もスケジュールをきって一日の作業量を決めてやり方で書いているんで自分らしいなと…。

吉田
作品を作ると人に見せたくなるじゃないですか、配ったりはしなかったんですか?

吉浦
このときはまだ人に見せたいという衝動はなくて、親が勝手に配っていましたね。それで卒業式のときに「小説がベストセラーになったね、吉浦くん」って言われて、恥ずかしかった覚えがあります

吉田
でもその人が国際的なアニメ監督になったわけですから

――どうしても最初の一文だけでも読んでくれっというスタッフからの要望で、吉田さんが音読をすることに。

吉田
僕はいつものように部屋の隅に座りこんでいた。これは僕のくせなんだ。落ち込んだときはいつもこんなふうに座っていた。テストで0点を取ったときも、母さんに怒られたときも、友達とケンカしたときもこんなふうに座っていた

――あまりにも恥ずかしすぎて耳を塞ぐ吉浦さん。

吉田
こんなふうにしなくても気持ちは収まるのだが、なぜかこんなことをついしてしまう。これはくせである。だが、こんなことをするのにはもう一つわけがある。…すごく次が気になるんですよ、この小説。児童文学だって言われてもおかしくはないです

吉浦
いや…、テストで0点とか書くなよって突っ込んじゃいました

吉田
まだまだ話し足りないんですけど、もう50分過ぎちゃいました。吉浦さんとはパテマの話をもっとしたいんですけど、まだ公開してないので話せない。公開されたらまた来てください!

吉浦
そうですね。あ、あと、SF大会でトークするんで…あ、カンペ忘れちゃいました

吉田
僕も忘れてきたんで、「SF大会 ニコ生 吉浦康裕」で検索してください。あと、新しいアニメが企画進行中なんですよね?

吉浦
もう情報でているんですけど、「アルモニ」という作品なんですが、タイトルだけ出て、中身はまだこれからです。今回は正当SFな要素はあんまりないです…いや、少しはあるかな?

吉田
あ、ちょっと不思議系のSFなんですね

吉浦
はい、楽しみにしていてください

【編集注】
※5 吉浦監督最新作。2013年11月公開予定。地下と地上で重力が反転している世界で出会った少女パテマと少年エイジの物語。思春期ならではの甘酸っぱい恋心を描く。

※6 冒頭部分のこと。

※7 アメリカのパソコン用ソフトメーカー「Cyan」の PCゲーム。本の中にあるMIST島に閉じこまられてしまったプレイヤーが、本と島の秘密を解き明かしていく。

今日の一筆

m10_6

吉田
吉浦さん、絵は描かないんですよね?

吉浦
僕はアニメーターになれるほど絵は上手くないので、『ペイル・コクーン』は実はロトスコープなんですよ

-放送まとめ
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